福島第一原発事故による子どもの外部被ばく

 2011年3月に発生した東日本大震災及び福島第一原発事故によって、放射性物質が環境中に放出されました。これにより、福島第一原発周辺の地域では、放射線による被ばくが大きな健康上の懸念となりました。放射線被ばくには内部被ばくと外部被ばくがあります。内部被ばくについては、福島第一原発事故発生後、政府や自治体が市場に流通する食品の厳密な放射能検査を迅速に開始したため、被災地の住民の内部被ばくは非常に低いレベルに抑えられていたことがわかっています。そのため、住民の放射線被ばくはほとんどが外部被ばくによるものと考えられています。

 放射線被ばくの影響が特に心配されるのは子どもたちです。今回は、福島第一原発周辺地域に住む子どもたちの外部被ばくの状況を調査した研究結果を解説いたします。

線量計を常に着用していた場合とそうでない場合の外部被ばく量測定値の違い

 2011年3月に発生した東日本大震災及び福島第一原発事故によって、放射性物質が環境中に放出されました。これにより、福島第一原発周辺の地域では、放射線による被ばくが大きな健康上の懸念となりました。福島第一原発事故後、市場に流通する食品については政府が厳密な放射能検査を行ったことにより、住民の内部被ばく(体内に取り込んだ放射性物質による被ばく)はごくわずかでした。そのため、被ばくの主な経路は外部被ばく(体外の放射性物質による被ばく)である可能性があります。したがって、被ばくリスク対策のため、外部被ばくの評価は重要です。

 外部被ばく量は、モデルを用いた推定と直接測定のいずれかで評価することができます。モデルを用いた推定では、住民が暮らす地域の空気や土壌の放射線濃度と、住民の行動パターン(屋内で過ごすか屋外で過ごすかなど)によって外部被ばく量の推定値が算出されます。直接測定では、住民個人が線量計を身に着けて被ばく量の測定を行います。モデルによる推定のメリットは、迅速性と柔軟性です。起こりうる被ばくシナリオについて、個人または集団について推定外部被ばく量を算出することができます。しかし、推定の精度が課題であり、推定値と直接測定した外部被ばく量が異なる場合があります。住民個人の放射線被ばくに対する関心に応え、地域レベルの放射線防護に関する政策や戦略の方向性を検討するには、科学的不確実性が少なく、個人の状況を考慮できる直接測定が望ましいアプローチとなりえます。

 住民の中でも、子どもは放射線被ばくの影響が特に懸念されます。しかし、子どもが線量計を常に正しく使用できるとは限りません。線量計を正しく使用できなかった場合、直接測定の測定値に影響を与える可能性があります。そのため、線量計の使用に関する問題をよりよく理解し、放射線災害における外部被ばく量の適切な評価と放射線防護の方法を考える必要があります。このことから、本研究は次の2つを目的としました。

(1)福島第一原発事故後、どのような子どもたちが線量計を正しく使用しない傾向にあったか知ること。

(2)線量計の不適切な使用によって測定値にどの程度の誤差が生じるか評価すること。

 調査は、福島第一原発から14-38 km離れた南相馬市で行われました。南相馬市は、震災後の2011年10月1日以降、市に居住する乳幼児、子ども(小子どもから高校生まで)、妊婦に対する外部被ばくのスクリーニングプログラムを無料で提供しています。スクリーニングプログラムは3か月に1回実施されています。プログラムの参加者は市役所から線量計を郵送で受け取り、3か月の測定終了後、線量計を市役所に返却しました。返却された線量計の測定値は南相馬市立総合病院で記録されました。参加者には線量計の使用方法として、線量計を一日中首から提げること、屋内にいる間は線量計を参加者の近くに置いてもよいことが説明されました。また、子どもについては、測定期間中の家庭や学校での行動に関する、自己申告による調査も行われました。この調査では、日中のほとんどの時間を過ごした部屋、就寝場所、通学時間、学校での座席の位置や1週間あたりの屋外運動回数、線量計をどのような状況で着用していたか(学校に持参し使用したか、通学中に着用したか、家にいるときや就寝時に自分のそばに置いていたかなど)などが質問されました。また、研究においては、参加者の居住地や学校における空間線量率(外気中の放射線の強さ)も考慮されました。空間線量率は、文部科学省の公式サイトから入手した空間線量率のモニタリング結果から、参加者の居住地や学校の位置について推定を行いました。

 こうして得られた1637人の子どものデータについて分析を行った結果、117人(7.3 %)が線量計を一日中使用していたことがわかりました。家での使用状況と学校での使用状況には大きな差が見られました。多くの子どもが家にいるときと就寝中には線量計を着用しておらず、家にいるときに線量計を使用しないと回答した子どもが70.3 %、就寝時に使用しないと回答した子どもが69.2 %でした。対照的に、94.6 %の子どもが学校に線量計を持参しており、70.5 %が学校で線量計を使用していました。また、学校で線量計を使用しない子どもは、家庭、屋外、就寝時でも線量計を使用しない傾向が見られました。小中子どもは高校生に比べ、線量計を使用しない傾向にありました。屋外で線量計を使用する傾向が低くなる要因としては、屋外スポーツクラブに所属していることと、週末に屋外で過ごす時間が長いことが挙げられました。また、線量計の使用率が高くなる要因として、自宅がある場所の空間線量率が高いことと、女性であることが挙げられました。

 線量計を適切に使用した119人の子どものデータを用いて、外部被ばく線量を予測するモデルを作成しました。モデルでは、家庭や学校の敷地内の空間線量率、性別、居住地域、放課後や休日に屋外で過ごした時間などが考慮されました。このモデルを用いて、残りの子どもの外部被ばく線量が予測されました。この予測値と、線量計による実測値の比較を行いました。その結果、測定時間全体では、測定線量と予測線量の間に有意な差は見られなかったのですが、時間別(通学中、学校滞在中、自宅滞在中、屋外滞在中、就寝中)に比較すると、通学中と屋外滞在中については予測値と実測値の間に有意な差が見られました。通学中に線量計を使用した子どもの実測値は、予測値よりも0.04 mSv高く、予測値との差は13 %でした。また、屋外で線量計を使用していない子どもの実測値は、平均して予測値より0.01 mSv低く、3 %の差があることが示されました。

 結論として、線量計が適切に使用されなかった場合でも、ある程度の精度で外部被ばく量の評価が可能であることが示されました。しかし、子どもが線量計を使用する時間が短くなることで、実際の外部被ばく量が正確に測れなくなる可能性があり、子どもたちには線量計の使用について的確な案内を行う必要があります。

 今回の調査では、子どもが自宅や屋外にいるときに線量計を使用しないことが、線量計の適切な使用率を下げる要因になっていることが示唆されました。もしかすると、保護者は子どもが学校にいる間の被ばくを特に懸念される傾向があるのかもしれません。このことから、線量計の使用について、学校にいる間以外の時間帯に焦点を当てた案内が必要と考えられます。また、小学生と中学生は高校生に比べて線量計の使用傾向が低かったことから、年齢の低い子どもには、線量計の扱いが難しい可能性があります。したがって、年齢の低い子どもには、線量計の使用方法についてより具体的な案内が必要かもしれません。また、屋外の活動が多い子どもは線量計を使用しない傾向が見られましたが、外で遊んでいる間に線量計の着用に違和感を覚えて着用をやめた可能性があります。線量計の使用について、子どもたちへの的確な案内を行うことは、線量計の使用率を向上させると思われます。しかし、過剰な指示が子どもたちにとってストレスとなり、日常生活に影響を及ぼす可能性も考慮しながら、どのような指導が子どもたちにとって最適か議論することが重要です。

Nomura S, Tsubokura M, Hayano R, et al. Compliance with the proper use of an individual radiation dosimeter among children and the effects of improper use on the measured dose: a retrospective study 18-20 months following Japan’s 2011 Fukushima nuclear incident. BMJ Open 2015; 5(12): e009555.

子どもの外部被ばく線量には、短時間の屋外活動よりも家や学校の空間線量率が大きく影響する

 2011年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原発事故により、環境中に放射性物質が放出されました。これにより、福島第一原発周辺の地域では、放射線による被ばくが大きな健康上の懸念となりました。放射線被ばくは、大きく内部被ばく(体内に取り込んだ放射性物質による被ばく)と外部被ばく(体外にある放射性物質による被ばく)に分けられます。福島第一原発事故後、行政が早い段階から市場に流通する食品の放射能検査を徹底したため、住民の内部被ばくは非常に低いレベルに抑えられていたことが、住民の内部被ばく測定によりわかっています。そのため、住民の放射線被ばくは主に外部被ばくによるものと考えられます。外部被ばくを評価する方法には、直接測定とモデルによる推定の2種類があります。直接測定は、個人の状況に沿った外部被ばく量を確認できる一方、線量計を身に着けている間の個人レベルの外部被ばく量しか知ることができず、長期的あるいは集団の外部被ばく量を評価することは困難です。それに対し、モデルによる推定は、評価対象としたい期間や集団の設定を柔軟に行うことができます。しかし、推定に用いるパラメータ(外部被ばく量に影響する要素)については科学的知識とエビデンスが不足しており、推定値が直接測定による値と一致しない場合があります。モデルによる推定をより正確に行うために、個人の外部被ばく量に影響する要素についてさらなる調査が必要です。そのため、本研究では、福島第一原発事故後18~20か月間の子どもの行動パターンと外部被ばく量の関係を評価しました。

 今回の調査には、福島第一原発から14~38 kmの位置にある福島県南相馬市の子どもの外部被ばく量測定結果を用いました。南相馬市は2011年10月以降、市に住民登録をしている乳幼児、子ども、妊婦に対して外部被ばくの無料スクリーニングプログラムを提供しています。このプログラムは、次の手順で3か月に1回実施されました。まず、参加者には市役所から外部被ばく量を測る線量計が送られました。参加者は、線量計の適切な使用方法を指示され、線量計を着用して測定を行いました。3か月の測定期間終了後、参加者は線量計を市役所に送り返しました。線量計の値は南相馬市立総合病院で記録されました。また、線量計による外部被ばく量の測定に伴い、参加者にはアンケートが配布されました。アンケートの内容は、測定期間中の家庭や学校における子どもの行動や、線量計の使用状況について質問するものでした。今回の研究には、2012年9月1日から2012年11月31日にかけて実施されたプログラムに参加した子どものうち、市内に居住しており、アンケートの必要な情報すべてについて回答が得られ、線量計を適切に使用していた520人のデータを使用しました。

 まず、線量計の値を確認したところ、子どもたちの外部被ばく量の平均値は0.34 mSvでした。高校生は小学生より0.06 mSv、中学生より0.02 mSv有意に高い外部被ばく量を示しました。性別や居住地域(農村部か都市部か)による違いは見られませんでした。外部被ばく量と行動パターンの関係を調べたところ、通勤時間や週当たりの屋外授業の実施回数、屋外での部活動、放課後や週末に屋外で過ごした時間など、屋外での活動に関連する行動は、3か月間の外部被ばく線量と統計的に有意な関係がないことが示されました。ただし、今回の調査の参加者は、屋外の部活動の制限や車通学などによって、大半が屋外であまり長い時間を過ごしていませんでした。そのために、屋外での活動が外部被ばく量の総量に対してもたらす影響が小さくなり、統計的に有意な関係がみられなかった可能性が考えられます。一方、自宅の空間線量率(外気中の放射線量を表す指標)が0.1μSv/h増加すると、外部被ばく量が10 %増加していました。学校の空間線量率については、0.01μSv/hの増加に対して2%の外部被ばく量の増加が見られました。さらに、学校の教室で部屋の中央部に座っている生徒の外部被ばく線量は、窓側の座席に座っている生徒に比べ10%低く、教室の座席の位置が外部被ばく線量に影響を与える要因であることが示唆されました。これらのことから、子どもの外部被ばく量を評価するには、短時間の屋外での活動よりも、家や学校がある場所の空間線量率を考慮するのが適切と考えられます。

Nomura S, Tsubokura M, Furutani T, et al. Dependence of radiation dose on the behavioral patterns among school children: a retrospective analysis 18 to 20 months following the 2011 Fukushima nuclear incident in Japan. J Radiat Res 2016; 57(1): 1-8.

子どもの放射線被ばくは外部被ばくによるものがほとんどだった(南相馬市)

 2011年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原発事故によって、環境中に放射性物質が放出されました。これにより、福島第一原発周辺の地域では、放射線による被ばくが大きな健康上の懸念となりました。放射線被ばくは、その程度によっては、腫瘍の発生率の増加など、長期的な健康リスクをもたらす可能性があります。そのため、住民の放射線被ばくレベルを評価し、放射線被ばくを低減することが必要です。

 放射線被ばくは、大きく内部被ばく(体内に取り込んだ放射性物質による被ばく)と外部被ばく(体外にある放射性物質による被ばく)に分けられます。内部被ばくや外部被ばくは、土壌や食品の放射能汚染に関するデータを用いてモデルによって推定することができます。しかし、被ばく量の推定の方法については科学的なエビデンスが不足している部分があり、推定値は実際の被ばく量と大きく異なる場合があります。保守的な推定がなされることから、推定値が実際の被ばく量よりも高くなる傾向があります。さらに、このような推定は、個人差を考慮せず、評価対象の地域の居住者の平均的な被ばく量を推定します。実際は、同じ地域の居住者でも、ライフスタイルなどの違いがあるため、人によって被ばく量は大きく異なります。そのため、住民ひとりひとりの健康リスクを正確に評価するためには、被ばく量を個別に測定することが不可欠です。

 福島第一原発事故の発生を受けて、福島県内のいくつかの自治体では独自に住民の内部被ばく調査が行われています。福島第一原発の北14~38 kmに位置する福島県南相馬市では、2011年7月から、ホールボディカウンター(WBC)を用いて、初の自治体主導の内部被ばくスクリーニングプログラムを実施しました。このプログラムによって、南相馬市内の小中学生に慢性的な内部被ばくがほとんどないことが示されています。しかし、外部被ばくのレベルについてはほとんどデータがありませんでした。したがって、住民の被ばく量の評価のために、住民の個別の外部被ばく量を調査する必要がありました。2011年10月、南相馬市は放射線モニタリングサービス・機器メーカーの千代田テクノル株式会社と共同で、個人線量計を用いた外部被ばくスクリーニングプログラムを開始しました。それ以降、南相馬市の子どもたちの外部被ばく量の測定が繰り返し行われています。今回は、福島第一原発の周辺住民の放射線被ばく量を評価し、被ばく量の個人差を明らかにするために、南相馬市の子どもたちの内部被ばく量および外部被ばく量のモニタリング結果をもとに、彼らの年間追加被ばく量(被ばく量からもともと環境中にある放射性物質の影響を差し引いた、原発事故の影響による1年間の放射線被ばく量)を調べました。

 今回の調査では、2012年4月1日から2013年3月31日までに、外部被ばくおよび内部被ばくのスクリーニングプログラムに参加した南相馬市の小中学生についてデータを収集しました。得られたデータから、外部被ばくによる年間実効線量(身体の各組織に対する放射線被ばくの影響を考慮した被ばく量の指標)および内部被ばくによる年間実効線量をそれぞれ算出し、合計しました。その結果、まず内部被ばくによる年間追加実効線量は、0.25~0.85 mSv/年であり、中央値は0.04 mSv/年でした。また、外部被ばくによる年間追加実効線量は、0.00~3.45 mSv/年であり、中央値は0.66 mSv/年でした。さらに、内部被ばくと外部被ばくを合わせた年間追加実効線量の中央値は0.70 mSv/年(範囲:0.025~3.49 mSv/年)であり、その90.3 %が外部被ばくによるものでした。この年間追加実効線量からは、放射線被ばくによる健康リスクは非常に低いと考えられます。また、年間追加実効線量は個人のライフスタイルや居住地域(都市部か農村部か)などによって大きく異なり、代表値では住民の放射線関連の健康リスクを包括的に推定するには不十分であることが示唆されました。比較的放射線被ばくの多い住民を個別に支援できるような、被ばく量低減のアプローチを確立する必要があります。

Tsubokura M, Kato S, Morita T, et al. Assessment of the Annual Additional Effective Doses amongst Minamisoma Children during the Second Year after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Disaster. PloS one 2015; 10(6): e0129114.

相馬市における外部被ばく量は低下しており、影響は無視できる程度

 2011年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原発事故により、環境中に大量の放射性物質が放出されました。そのため、福島第一原発の周辺住民の放射線被ばくが、公衆衛生上の重要な懸念となりました。放射線被ばくは、大きく内部被ばく(体内に取り込んだ放射性物質による被ばく)と外部被ばく(体外にある放射性物質による被ばく)に分類されます。内部被ばく量は、放射能汚染された食品を日常的に摂取するなど、個人の食習慣に大きく影響されることがわかっています。一方、外部被ばく量は、主に住民が長時間過ごす居住地などの空間線量率(外気中の放射線濃度を示す指標)に依存し、生活習慣そのものが外部被ばく量に与える影響は、特に子どもにおいては限定的です。福島第一原発事故後、政府や地方自治体が迅速に市場に流通する食品の放射能汚染検査を徹底したために、住民の慢性的な内部被ばく量はごくわずかであったことがわかっています。放射能検査を受けていない地元産の食品を継続して摂取していたごく一部の住民について、比較的高い内部被ばくが確認されたのみでした。しかし、慢性的な外部被ばくについては、個人の被ばく量、特に事故後の外部被ばく量の年次変化や、除染が外部被ばくに及ぼした影響については情報がほとんどありません。私たちの以前の研究では、福島第一原発事故後の2012年時点で、福島第一原発の北14~38 kmに位置する福島県南相馬市における住民の外部被ばく量が総被ばく量(内部被ばく量と外部被ばく量の合計)の90.3%を占めていたことが示されました。したがって、外部被ばくによる線量を評価することは非常に重要です。そのため、本研究は次の2つのことを行いました。まず、今回の調査対象とした福島県相馬市の住民の慢性的な外部被ばくレベルを評価するため、16歳未満の子どもについて、外部被ばくによる年間追加被ばく量の変化を調べました。また、外部被ばく量への除染の有効性を評価するため、除染を行った地域と行わなかった地域との間で、年間追加被ばく線量の減少傾向を比較しました。

 相馬市は福島第一原発から34~52 kmの距離に位置しており、避難区域ではありませんが、南相馬市などの避難区域を含む自治体と隣接しています。相馬市の土壌は福島第一原発事故により拡散された放射性物質の影響を受けていますが、ほとんどの住民が福島第一原発事故後も避難せずにこの地域に住み続けていました。2011年以降、相馬市は毎年、小中学生を対象とした線量計による外部被ばく量の評価を実施しています。今回の研究では、2011年10月から2015年11月までにこのスクリーニングプログラムに参加した16歳未満の子どものデータを分析しました。分析の便宜上、相馬市内を土壌の放射能レベルや除染のタイミングによって5つのゾーン(ゾーン1、2、3、4、及び市内のその他のエリア)に分けました。このうち、ゾーン1、2、3、4では土壌が市内で比較的高い放射能レベルを示しており、これらのゾーンでのみ除染が行われました。ゾーン1、2、3、4はそれぞれ相馬市の山上地区、八幡地区、玉野地区、赤木地区に相当します。

 分析の結果、相馬市の子どもたちの外部被ばく量の平均値は年々減少していたことがわかりました。2011年、2012年、2013年、2014年、2015年に実施されたスクリーニングプログラムにおける、外部被ばくによる年間追加実効線量の平均値は、それぞれ0.60 mSv(範囲:検出不能(ND)-4.29 mSv)、0.37 mSv(ND-3.61 mSv)、0.22 mSv(範囲:ND-1.44 mSv)、0.20 mSv(ND-1.87 mSv)、0.17 mSv(ND-0.85 mSv)でした。1 mSvを超える子どもの割合は、相馬市全体で2011年の15.6 %から2015年には0 %に減少しました。地域によって外部被ばくの程度は異なるものの、今回定義したすべてのゾーンで明らかな減少傾向を示しました。一方、外部被ばく量が検出限界以下であった子どもの割合は、2011年の2.1 %から2015年には66.6 %に増加しました。また、今回の測定対象である放射性セシウムの崩壊のみによる外部被ばく量の減少(物理的減衰、年間追加実効線量の前年比)を推定し、実際の外部被ばく量の減少(年間追加実効線量の前年比)と比較しました。その結果、2012年と2013年は、ゾーン4を除くすべての地域で、実際の外部被ばく量の減少が、物理的減衰を上回りました。除染をおこなっていない地域でも実際の減少が物理的減衰を上回りましたが、これは風化によるものと考えられます。2014年と2015年については、実際の減少と物理的減衰が同程度でした。除染が行われた地域について、除染直後の年間追加実効線量の前年比は、ゾーン1~3については除染が行われていない地域に対して有意に小さい(つまり、減少比率が高い)ことがわかりました。ただし、除染による年間追加実効線量の減少はゾーン1、2、3でそれぞれ0.04 mSv(減少比率:13 %)、0.04 mSv(16 %)、0.24 mSv(28 %)であり、外部被ばく量の減少効果は限られていたと言えます。ゾーン4については、除染を行っていない地域に比べ、減少比率に明らかな差は見られませんでした。

 この研究により、福島第一原発事故から5年間の間に、16歳未満の相馬市民の外部被ばく量のレベルは低下しており、慢性的な外部被ばくの影響は無視できる程度である可能性が示唆されました。除染を行っていない地域でも外部被ばく量は物理的減衰による推定よりも大きく減少しており、風化の影響によるものと考えられます。除染は外部被ばく量の低減に対し、限定的な効果があったことがわかりました。

Tsubokura M, Murakami M, Nomura S, et al. Individual external doses below the lowest reference level of 1 mSv per year five years after the 2011 Fukushima nuclear accident among all children in Soma City, Fukushima: A retrospective observational study. PloS one 2017; 12(2): e0172305.

まとめ

 今回は、福島第一原発周辺に住む子どもたちの外部被ばくの状況について解説しました。個人の外部被ばく量は個人線量計を用いて測定されますが、線量計を常に身に着けることができなかった場合でも、ある程度の精度で外部被ばく量を評価できることが示されました。線量計を使用する時間が短いことで、測定値の正確性が下がる可能性もあるため、線量計の使い方を子どもたちにわかりやすく伝える必要はありますが、線量計の使用が子どもたちにとって大きなストレスにならないよう配慮することも大切です。また、福島第一原発の北14~38 kmに位置し、避難区域を含む福島県南相馬市の子どもの外部被ばくスクリーニングの結果を解析したところ、子どもの外部被ばく量を評価するには、短時間の屋外での活動よりも、家や学校がある場所の空間線量率を考慮するのが適切と考えられました。同市の子どもたちの内部被ばくと外部被ばくを合わせた年間追加実効線量は、健康リスクが非常に低いと考えられる程度に小さな値で、その大部分が外部被ばくによるものでした。南相馬市と隣接し、避難区域を含まない相馬市の子どもたちについては、福島第一原発事故から5年間の間に外部被ばく量のレベルは低下しており、慢性的な外部被ばくの影響は無視できる程度であったことがわかりました。子どもたちの放射線被ばくを低減することは重要です。その中で、放射線被ばくの状況を正確に把握し、屋外での活動などを過剰に制限しないようにすることも大切と思われます。

謝辞

被災者の住民の安心向上に取り組まれた方々、調査に協力された住民の皆様に深い尊敬と感謝の意を表すとともに、今回の研究にご協力いただいた方々に厚く御礼申し上げます。

作成者:松本智紘

 

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